緑内障
緑内障の症状・特徴
緑内障は日本の中途失明原因の第1位で、視野狭窄や視力低下を引き起こします。2000年から2002年に岐阜県多治見市で実施された緑内障の疫学調査(多治見スタディ)から40歳以上の5.0%(20人に1人)が緑内障であることが明らかとなりました。この結果は緑内障がとても頻度の高い病気であることを示しています。
また同調査から、緑内障の新規発見率、つまり調査時に自分が緑内障であることを知らなかった対象者が89%もいたことが明らかとなりました。これは緑内障の初期では自覚症状に乏しい病気である事に由来しています。
緑内障とは
緑内障はどのような病気なのでしょうか?
緑内障診療ガイドライン(第4版)によると
「緑内障は、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義されています。
例えるとプロジェクター(脳)とパソコン(眼)をつなぐ接続ケーブル(視神経)が断線し、画面が映らない(視野が欠ける)イメージです。この視神経の障害には眼圧が深く関わっていることが明らかとなっています。眼圧はボールの硬さのようなもので、10mmHgから21(日本人では20)mmHgが正常範囲とされています。
緑内障の治療
現在、最も確実な唯一の緑内障治療は点眼・レーザー・手術等による眼圧下降治療です。治療を行ってもいったん消失した視野は改善しません。そのため早期発見と早期治療により視機能障害を抑制する事が重要となってきます。
緑内障のタイプにより治療方針は異なりますが、一般的には点眼により眼圧を治療前よりも20〜30%程度下降させることが目標となります。眼圧を十分下降させることで、緑内障の発症や進行が抑制されることが多くの研究結果から明らかとなっています。
緑内障患者さんにおける内服薬の禁忌について
一部の内服薬(抗コリン薬)は緑内障患者で使用してはいけないとされています。抗コリン薬には睡眠薬・抗うつ薬・抗パーキンソン薬・感冒(かぜ)薬などが含まれます。ではこれらの薬剤はなぜ緑内障患者さんで使用出来ないのでしょうか?
緑内障には様々なタイプ(病型)があります。大きく2つに分けると、眼の中の水(房水)の流れる通路(隅角)が開放しているのか閉塞しているのかで分類します。多くの緑内障患者さんは開放隅角ですが、閉塞隅角では抗コリン剤の内服により隅角が閉塞し眼圧が上昇することがあるため禁忌となっています。
緑内障の全身への影響
緑内障は視野や視力が障害されるだけでなく、睡眠中の血圧や精神機能とも関連することを我々の研究グループが明らかとしました。
これらの研究結果は緑内障が眼だけの病気でなく、全身にも影響を与えている可能性を示唆していることから緑内障患者さんはより健康に気を配る必要があると言えます。
参考文献
- ※1
Increased nighttime blood pressure in patients with glaucoma: cross-sectional analysis of the LIGHT Study. Yoshikawa T, Obayashi K, Miyata K, Saeki K, Ogata N. Ophthalmology 2019 in press - ※2
Association between glaucomatous optic disc and depressive symptoms independent of light exposure profiles: a cross-sectional study of the HEIJO-KYO cohort. Yoshikawa T, Obayashi K, Miyata K, Ueda T, Kurumatani N, Saeki K, Ogata N. The British journal of ophthalmology, 103;1119-1122. 2019