近視
近視
近視は世界中で増加傾向にあり、特に日本を含む東アジアの先進国ではその増加が著しいとされています。疫学調査によると2000年には世界人口の約14億人(4〜5人に1人の割合)が近視であると報告されています。
近視は若年者の場合眼鏡を装用すれば近くも遠くも見えるため一見すると問題ないように考えがちですが、緑内障・網膜剥離・近視性黄斑症の発症リスク(それぞれ3.3倍、21.5倍、40.6倍)が高いため視力低下をきたしやすいことが分かっています。
また高齢になると視力低下は眼だけの問題ではなく、認知機能低下にも影響する可能性があるという報告があり社会的にも重要な問題と言えます。
それでは近視の進行予防にはどのような方法があるのでしょうか?
世界中で近視の進行予防に対する様々な治療が提案されていますが、その中でも期待されているのが低濃度アトロピン点眼治療です。
低濃度アトロピン点眼治療
近年世界中で注目を浴びている治療です。アトロピンは副交感神経の活動を抑制する働きがあり、散瞳・調節麻痺・心拍数増大などを引き起こします。アトロピンが近視進行を抑制するメカニズムは明らかではありませんが、1999年にシンガポールで行われた研究(ATOM-1)では1%アトロピン点眼で近視の進行が2年間で約77%抑制されたと報告されました。
しかし点眼を中止するとリバウンド現象が起きていたためアトロピン点眼の濃度を低下させたATOM-2研究がその後に行われました。その結果、0.01%アトロピン点眼は約50%の近視抑制効果があり、リバウンドも認めなかったことが示されました。
日本で近視予防に対する低濃度アトロピン点眼治療は保険診療で可能でしょうか?
現在、低濃度アトロピン点眼治療は日本人の学童での有効性・安全性が明らかではないため保険診療では認められていません。しかし近視予防に対する低濃度アトロピン点眼治療の臨床研究が日本でも進行中ですので、日本人学童での低濃度アトロピンの近視抑制効果が明らかになれば今後一般診療でも用いられるかもしれません。
低濃度アトロピン点眼の問題点
アトロピンは瞳孔を広げる働きや調節力を麻痺させる働きがあるため、副作用としてまぶしさや調節障害が生じることがあります。また学童への長期的な投与の安全性は分かっていないことにも注意が必要です。
日常生活で近視を防ぐためにはどのようなことに気を付けるべきでしょうか?
近視研究会は学童の近視予防のために日常生活で留意すべき7項目を挙げています。
- 1日にできれば2時間は外で遊ぶようにしましょう。
- 学校の休み時間はできるだけ外で遊びましょう。
- 本は目から30cm以上離して読みましょう。
- 読書は背筋を伸ばし、良い姿勢で読みましょう。
左右どちらかが本に近い状態にならないよう、均等な距離になるようにして読みましょう。 - 読書・スマホ・ゲームなどの近業は1時間したら5分〜10分程度は休み、
できるだけ外の景色をみたり、外に出てリフレッシュしましょう。 - 規則正しい生活(早寝早起き)をこころがけましょう。
- 定期的な眼科専門医の診察を受けましょう。
近視研究会「学童の近視進行予防7項目」
近視についてもう少し詳しく知りたい方は、日本近視学会監修の「親子で学ぶ近視サイト」をご覧ください。